更新日:2020年9月3日
富永ジョイナー有限会社(徳島市福島1丁目3-42)
代表 富永 啓司さん
業種 木工業(指物)
創業 1895年(明治28年)
Webサイト http://t-joiner.com/(外部サイト)
創業は今から120年以上前、明治28年に遡ります。木材の集散地であった徳島県は、かつて全国2位の建具の産地でした。2代目の頃迎えた太平洋戦争では、時代が求めた丈夫な箱を手掛け、全国建具組合の副会長を務めた3代目は、高度経済成長期に飾り組子を用いた作品に力を入れました。英語で指物師を表すジョイナーを社名に採り入れたのもその頃です。
4代目であり、現社長である私は他の仕事に就いていましたが、27歳で徳島に戻り入社することになりました。しかし、この業界では確固たる信念と技術がなければ誰も相手にしてくれません。精進して技術を磨くことで、寺社建築や寺の家具を担えるようになりました。また、幸いにも全国大会で2度の入賞を果たすことができ、平成27年には阿波の名工にも選んでいただきました。
海外の指物と比べても杉や桧といった木材を加工する日本の指物技術は繊細です。当社は技術だけでなく、人を大切にすることを信条としており、海外から日本の伝統技術を学びたい人を広く受け入れることで、当社から巣立った弟子たちが本国へ戻った後も、ずっとつながる人脈を築いてきました。
阿波指物の技術を結集したミストミラー
平成30年度の徳島市販路拡大支援事業補助金(製品開発・改良事業)を活用して、阿波指物の技術を結集したミストミラーを開発し、同年の徳島市販路拡大支援事業補助金(展示会等出展事業)を活用してフランスで開催されるメゾン・エ・オブジェに出展しました。
この展示会はイタリアのミラノサローネ、ドイツのケルン国際家具見本市と並ぶ三大家具見本市であり、インテリア流行の最先端の場において阿波指物の技術をアピールすることができました。製品をご覧になった方からは、建築の構造壁の中に取り入れたい、インテリアエレメントとして惹かれた、自社の商品に組み込みたいなど、多くの反響をいただくとともに、日本の飲食店の内装や、ミラノサローネに出展する商品などへの依頼がありました。また、会場で行われた販売会では、その後の取引につながる手応えがありました。徳島市の支援施策を活用したことで、徳島から世界の舞台へと歩みを進めることができたと思います。
釘などの接合材を用いずに木を組み合わせて作る日本の指物は、世界に誇れる日本の伝統技術です。当社は人材を育成して送り出したことで、国内だけでなく海外にも広く指物師のつながりがあり、そこから新たな取り組みにつながることがあります。木でなければなし得ないこと、木ならではの質感にはいつの時代も変わらない説得力があります。そこに人の手業と感性を添えることで、もっと人に寄り添える普遍的な価値を提案していければと考えています。
「COOL JAPAN AWARD2019」では、国内307作品の中から、当社が出品した「ミストミラー曲げ組子『波』」が「COOL JAPAN」の認定を得ました。これは、世界各国の外国人審査員により、外国人目線で客観的に「クール」と認められたものを「クールジャパン」として発掘・認定する制度です。この取り組みは日本の外需拡大、地域経済の活性化に資することを目的に行われており、海外においても当社の技術と感性が高く評価されたものと考えています。
一般向けではなくても、技能を磨いて伝統を継承することは職人としての義務であると考えており、人材育成に力を入れることで、江戸指物、京指物などと並んで阿波指物としての評価を確立することを目指しています。もちろん、当社にいる若手職人は、将来、業界を背負っていく人材に育つと確信しています。
一方で、一般の人が気軽に木工製品と触れ合える場を作りたいと考えており、例えば、仕事場とカフェが一体となったような空間もあり得るのではないかと思います。高度な指物師の技能を通じた伝統工芸にとどまることなく、今の時代だからこそできること、「木育」などを通じて木を愛おしく思える時間を提案していきたいと考えています。
(取材 中小企業診断士 平井吉信)
徳島市中小企業販路拡大支援事業補助金についてはこちらをご覧ください。
経済政策課
〒770-8571 徳島県徳島市幸町2丁目5番地(本館3階)
電話:088-621-5225
ファクス:088-621-5196