幽霊画コンテスト
最終更新日:2017年11月3日
幽霊画コンテスト総評
予想を大幅に上回る116人の方にご応募いただきました。ありがとうございます。応募地域も北海道から九州まで全国津々浦々より、また年齢は3歳から87歳までと幅広い層から応募がございました。このことからも「幽霊」が地域や老若男女隔たりない人間共通のテーマだと改めて認識した次第です。
応募人数が多かったことから、一般の部(中学生以上)とこどもの部(小学生以下)で部門を分けました。
一般の部は、多様な作品が集まりました。江戸時代以降の幽霊像(足がないなど)を基盤としつつも、曼珠沙華など現代人のもっている不吉な象徴を組み合わせる作品やコンピュータによる作品などがあり、未だ幽霊の姿(イメージ)は拡散し続けているようです。全体的に暗く色彩も抑えられた作品が多く、幽霊に対し「死」や不気味・不吉といった印象を抱いていることが読み取れます。
こどもの部は、明るく色彩豊かです。墓場と幽霊など死後の世界を表わす組み合わせはみられるものの、幽霊は笑い楽しそうに動いています。負の感情よりも、自由に飛び回り夜に活動するわくわく感などが表れているのでしょう。大人に比べ経験も少なく、死や恨みなど抽象的な事象に対する理解が発達段階にあるからともいえますが、ここにはいつか大人が失ってしまった〈お化け〉に対する感性が輝いています。(桑野あさひ 当館学芸員)
応募地域
北海道、青森県、岩手県、茨城県、群馬県、千葉県、神奈川県、東京都、新潟県、長野県、静岡県、愛知県、岐阜県、富山県、京都府、大阪府、和歌山県、岡山県、広島県、徳島県、福岡県、大分県、宮崎県、長崎県、熊本県
審査について
- 審査にあたっては、作品に作品番号と作品名のみを付し、発想(作者独自の豊かな感性)・構図の巧みさ・色彩の用い方・手法について総合的な判断の上、審査を行いました。
- 審査員は、田中佳(徳島大学准教授)、新田元規(徳島大学准教授)、桑野あさひ(当館学芸員)がつとめました。
いずれの作品も魅力があり、制作に対する情熱を感じる作品ばかりでした。選考から外れてしまった方も、結果にとらわれることなく今後も個性を大切に芸術的感性を発揮くださることを願ってやみません(審査員一同)
一般の部グランプリ
若林咲希「寂然」
[画材]色えんぴつ
講評
- 田中佳(徳島大学准教授)
黒地に白の色鉛筆のみで木と女性の姿をした幽霊と彼岸花のみが描かれていますが、描写が非常に細かく、構図も秩序だっています。この世の木と彼岸花が明確に描かれ、それに対して幽霊は輪郭をあいまいにしながらぼかして描くなど細部に至るまでよく考えられています。
- 新田元規(徳島大学准教授)
木の下にただずむ女性、彼岸花といった(現代の)幽霊画に定番の要素が高い画力で描かれていて、所謂「幽霊画」として完成度の高い作品です。類似の応募作品が怨恨・悲嘆の情を強く表現しているのに対して、本作品は、感情表現は抑えて、静けさを表現しているのが印象的でした。
一般の部準グランプリ
吉田紀子「最後の接吻」
[画材]貼り絵
講評
- 田中佳(徳島大学准教授) 死後の天国行きと地獄行きを分かつ門の手前での最後の接吻という発想が興味深いです。それぞれの要素は日本や事件の伝統に則りながらも、接吻はクリムトを思わせ、天国と地獄の選択はキリスト教的な最後の審判のテーマにつながります。さまざまな素材を組み合わせて貼り絵の技法を用いていますが、それぞれの素材の選択、組み合わせとも効果的です。
- 新田元規(徳島大学准教授) 「此岸と彼岸との境界で、彼岸での行方を決める審判が待ち構えている」という画題に即して、「最後の接吻」が描かれています。「幽霊画」という通念からは少し外れるかもしれませんが、現世と来世の間での男女の姿が印象深く描写されており、「幽霊」のイメージを広げてくれます。
こどもの部グランプリ
ブラン ルカ「かくれるおばけペンギン」
[画材]サインペン・水彩・クレヨン・ケイコウペン・マニキュア・ペイントマーカー
講評
- 田中佳(徳島大学准教授) 発想力に驚かされました。幽霊・お化けというと怖い、気持ちが悪い、暗いというイメージがつきまといますが、このペンギンお化けはとても楽しそうです。ひとつひとつの要素の描写が細かいばかりでなく、背景のデザインも工夫されており、色の組み合わせも効果的になっています。
- 新田元規(徳島大学准教授)
「かくれる」お化けペンギンの体内世界という発想も、鮮やかな色彩も、どれもが「お化け」「幽霊」という通念から飛び出るものでした。まずユニークさに圧倒され、それからお化けペンギンの体内・体外世界の細かな描き込みに見入りました。「かくれて見える」「ぺんぎんの」お化けというユニークさがしっかりとした画力で表現されて、新しくてきれいで楽しい「お化け」が表現できています。
こどもの部準グランプリ
そがべかおる「おばけ」
[画材]クレパス
講評
- 田中佳(徳島大学准教授) 黒の無地の背景にクレパスでシンプルにお化けの輪郭を描いていますが、線に動きがあり、目や口の色線も非常に効果的に表されています。余計な要素を画面に一切入れなかったことで、浮かび上がって漂うお化けの姿がよく表わされています。
- 新田元規(徳島大学准教授) 白のダイナミックな輪郭線が黒地に映えて、シンプルながらお化けらしい迫力が出ています。目・口元も少しの不気味さとユーモラスさがうまく出ていて、これはどんなお化けなのだろうかという想像をかきたててくれます。
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