更新日:2019年6月19日
一組
銘 堀江興成(花押)
各長9.7 幅1.4
江戸時代後期
徳島市指定有形文化財(工芸品)
蜂須賀家旧蔵
藤原定(さだ)家(いえ)の自選歌集『拾遺愚草』の月次花鳥和歌二十四首の歌意に基づく、いわゆる定家詠十二ヶ月花鳥図を、揃いの小柄に仕立てた蜂須賀家旧蔵品。赤胴の地板を金哺みとし、魚子(ななこ)地に高彫色絵で月毎の花鳥図を表す。筋違(すじかい)鑢(やすり)を施した裏面には「堀江興成(花押)」の銘が認められる。さらに「御小刀柄 定家卿花鳥十二月 阿州臣 堀江興成作」と蓋表に金字で記された献上箱も伝存する。
作者の堀江興(おき)成(なり)(生没年未詳)は通称弥十郎、はじめ浜野家に入門して益随、のち大森英(てる)秀(ひで)に学び英俊を名乗る。独立後、興成と改名。一枝軒とも号した。文政一二年(1829)の「江戸無足諸士以下分限帳」(国立資料館蔵)には「一 五人銀五枚 同(=御彫物師)堀江弥十郎」と見え、徳島藩の抱工と知られる。
本作品は主家の用命になる傑作であるともに、装剣金工の限られた小画面の中、繊細な技巧を駆使しつつ、季節の移ろいに心寄せた宮廷文化の美意識を造形化した傑作といえよう。
『鐡華繚乱―ものゝふの美』,2019,p61.76
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