更新日:2019年6月28日
一口
淡路焼
蜂須賀茂韶筆
高7.1 cm 口径12.3 cm 高台径4.9 cm
蜂須賀智恵子氏寄贈
白釉をかけた胴部に「淡路かた 古茂江のうらの なかめこそ すま(須磨)に あかし(明石)に こゆへかえ 茂韶」とあり、徳島藩最後の藩主蜂須賀茂韶(もちあき)が自詠の和歌を記した蜂須賀家旧蔵の茶碗である。共箱の蓋表には「侯爵蜂須賀茂韶」の貼紙があり、制作当初に貼られたものであれば、華族令の出された明治17年以降の茶碗となる。端正な碗形に丈の高い切高台を備え、美しい白土で焼かれた本茶碗は民平焼を想わせる。民平窯を継承した淡陶社が明治期に制作したものであろうか。淡路島の東側に広がる景勝地、古茂江海岸の眺望の素晴らしさを詠み込んだ茂韶の和歌も、淡路焼ならではの意匠といえる。蜂須賀家では「古茂江歌入茶碗」と呼び架蔵していた。
蜂須賀家では明治期以降も、海老図茶碗を五、草花図茶碗を十、乙御前形香合を二十三、などというように多くの民平焼を所持し使用していた。また大正末年には、大河内正(まさ)敏(とし)所有民平焼として脚光を浴びた色絵花鳥図鉢の写し五十口の制作を、淡陶株式会社に依頼したことなども知られている。かつての藩領内で焼造、産出された民平焼を、明治以降も蜂須賀家では愛好し続けていたと考えられ、本茶碗もそうした中で制作されたと推測される。(小川)
『阿波の茶の湯』,2011,p69
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