更新日:2019年6月25日
一口
刃長24.8 cm 反り0.1 cm
南北朝時代
兼光(かねみつ)は光忠(みつただ)を祖とする備前長船派の四代目で、影光(かげみつ)の子と伝わる。制作年紀のある作では嘉暦・元徳・延文までのものがあり、鎌倉時代末期から南北朝時代に活躍した刀工として知れる。鎌倉時代と南北朝時代では作風が異なり、鎌倉時代には父影光に似た杢目鍛えで匂い本位の小互の目や片落ち互の目の刃文が多く、これに対して南北朝時代の文和(1352~56)ごろからは作風全般に大きな変化が現れ、いわゆる相州伝の影響を受けた相伝備前の作風となり、重ね薄く地鉄は板目鍛えで沸づいた湾たれ刃や直刃調の小乱れ、中直刃に小足入る作風が中心となる。
本作は、研ぎ減りにより往時の姿が著しく失われているものの、地鉄の良さは見事で鍛えは板目肌が流れごころを呈し、味わのある地沸が豊かに付き産ぶであった往時を偲ばせる。刃文は今だ細直刃を保っており、刃縁には精美な小沸がつく。彫刻は、父影光の得意とする櫃内に倶利伽羅竜を浮き彫りにする意匠を踏襲しており、研ぎ減りが目立つものの茎部分の彫りは健全で実に見事である。本当は徳島藩13代藩主蜂須賀斉裕(なりひろ)遺愛の一振りと伝わる。
『鐡華繚乱―ものゝふの美』,2019,p53.74
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