更新日:2019年6月25日
阿州泰吉作
天文二年八月一日
一口
刃長72.8 cm 反り2.0 cm
室町時代後期
天文2年(1533)
徳島県南の海部(かいふ)の地は古来より多くの刀鍛冶を輩出、それら刀工の刀を世に「海部刀」という。泰吉(やすよし)は、古刀期の代表刀工の一人で、現存刀中最も年紀作が多い刀工である。作例では永正・大永・享禄・天文・天正年紀のものが確認されるが、これらを作者銘等から判断すると永正・大永期の泰吉は1名、享禄・天文・天正年紀には4名ほどの泰吉が確認できる。
初期泰吉の作風は、銘は細鏨で切り、板目に沸出来の刃文、一枚帽子で「相州伝」を狙った作域が多く、後代泰吉は、いずれも相州風を示すが、互の目に尖り刃が交じるなど作風が若干異なり、銘には、片仮名銘や稚拙とも思われる銘等々、少なくとも4種類の銘振りが見られる。
本作は、庵棟、鎬造、中切先、身幅広く物打ち辺狭まる。地鉄は、板目に杢目肌が交じり、刃文は湾れ刃で、小沸つき砂流しかかる。帽子は、乱れ込んで小丸、先掃き掛けて長く返り棟焼きとなる。茎は生ぶ。目釘孔は1個、鑢目は勝手下がり。古刀期の海部刀の魅力が存分に味わえる天文泰吉の優品である。
『鐡華繚乱―ものゝふの美』,2019,p54.74.75
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