心肺蘇生法について
最終更新日:2023年1月20日
心肺蘇生法を学ぶ前に
心肺蘇生法とは「胸骨圧迫」と「人工呼吸」によって、止まってしまった心臓と呼吸を補い、助ける方法です。
人の体で最も弱い部分は脳細胞です。心臓・呼吸が止まって血流が停止し、酸素の供給が行われなくなると脳細胞は3~4分間で重大な障害を受け、回復が困難となるため、心肺蘇生法を早く開始することで、助かる可能性が高くなると言われています。
2021年の徳島市の統計では、119番通報から救急車が到着するまでの平均時間は約9分です。
従って、119番通報から救急車が現場到着するまでの間、そばにいるあなたが素早く心肺蘇生を始めることが大切なのです。
それでは、自動体外式除細動器(AED)の使用方法を含めた心肺蘇生法を学んでみましょう。
新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた市民による心肺蘇生法について
新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえ、心肺蘇生法の手順が一部変更されております。主な変更点は以下のとおりです。
○新型コロナウイルスが流行している状況においては、すべての心停止傷病者に感染の疑いがあるもの
として対応する。
○救助者はマスクが正しく着用できていることを確認する。
○傷病者の顔にあまり近づきすぎないようにする。
○成人の心停止に対しては、人工呼吸を行わずに胸骨圧迫とAEDによる電気ショックを実施する。
(注1)子どもの心停止に対しては、人工呼吸の訓練を受けていて、それを行う意思がある救助者は実施
します。
(注2)人工呼吸用の感染防護具があれば使用してください。
○ウイルスの飛散を防ぐため、胸骨圧迫を実施する前に傷病者の鼻と口をマスクやハンカチ、タオル、衣服などで覆う。
心肺蘇生法の流れ
1 反応(意識)の確認をする
- 傷病者の肩を軽くたたきながら、「大丈夫ですか」または「もしもし」と大声で呼びかけて、反応があるかないかをみます。
(注)反応の判断に迷う場合は119番通報し、通信指令員に指示を仰いでください。
2 助けを呼ぶ
- 反応がなければ、大きな声で「誰か来て!人が倒れています!」と助けを求めます。
- 協力者が来たら、「あなたは119番へ通報してください」「あなたはAEDを持ってきてください」と具体的に依頼します。
(注1)周りに誰もいない場合は、次の手順に移る前に、まず自分で119番通報をしてください。
(注2)119番通報すると、心肺蘇生法のやり方がわからない場合でも、通信指令員が行うべきことを
伝えます。
3 呼吸の確認
- 傷病者が「普段どおりの呼吸」をしているかどうかを確認します。
- 傷病者のそばに座り、10秒以内で傷病者の胸や腹部の上がり下がりを見て、普段どおりの呼吸をしているか判断します。
次のいずれかの場合には「普段どおりの呼吸なし」と判断してください。
・胸や腹部の動きがない場合
・10秒以内で呼吸の状態がよくわからない場合
・しゃくりあげるような、途切れ途切れに起こる呼吸が見られる場合
(注)確認や観察の際に、傷病者の顔と救助者の顔があまり近づきすぎないようにします。
4 胸骨圧迫
心臓は血液を全身に送るポンプの役割をしています。胸骨圧迫をすることで、止まってしまった心臓の代わりに全身に血液を送ることができます。
胸骨圧迫によって脳や心臓に血液を送ることでAEDの効果を高めたり、脳の後遺症を少なくしたりすることが期待できます。
- 傷病者に普段どおりの呼吸がない場合や、呼吸の判断に迷う場合は、マスクやハンカチ、タオル、衣服などで傷病者の鼻と口を覆い、胸骨圧迫を開始します。
- 胸の真ん中(胸骨の下半分)を、重ねた両手で「強く、速く、絶え間なく」圧迫します。
- 胸の真ん中(胸骨の下半分)に、片方の手の付け根を置きます。
- 他方の手をその手の上に重ねます。両手の指を互いに組むと、より力が集中します。
- 両肘をまっすぐに伸ばして手の付け根の部分に体重をかけ、真上から垂直に傷病者の胸が約5cm(子どもには胸の厚みの約3分の1)沈み込むように強く圧迫します。
- 1分間に100回~120回の速いテンポで連続して絶え間なく圧迫します。
- 圧迫と圧迫の間(圧迫を緩めるとき)は、胸がしっかり戻るまで十分に力を抜きます。
AEDの使用手順
5 AEDの到着と準備
心臓が突然止まる原因の一つに、心臓がブルブルと細かくふるえる「心室細動」という不整脈があります。心室細動は簡単に言うと「心臓のけいれん」です。心室細動は心臓のポンプ機能を失った状態で、できるだけ早く心臓に電気ショックを与え、心臓のけいれんを取り除くことがとても重要です。
AEDは、電気ショックを行い、「心室細動」を取り除くための機器です。
AEDにはいくつかの機種がありますが、電源を入れ、音声メッセージに従えば誰でも使えるように設計されています。使うのに特別な資格は必要ありません。
AEDの適応となる傷病者には二つの区分があります。「小学生以上」と「未就学児」です。小学生~大人用と、未就学児用の二種類の電極パッドが入っている機種や、本体に切り替えのスイッチがついている機種があります。(AEDは1歳未満の乳児にも使用できます。)
(注)2022年度から、AEDの表記が「小学生~大人用」・「未就学児用」と、呼称を従来の適応に合わせる形で変更になっています。「小学生~大人用」を成人用、「未就学児用」を小児用と、以前の表記が残っているAEDもあるので注意してください。
(1) AEDを傷病者の近くに置く
- AEDを傷病者の近くに置きます。
(2) AEDの電源を入れる
- AEDのふたを開け、電源ボタンを押します。ふたを開けると自動的に電源が入る機種もあります。
- 電源を入れたら、以降は音声メッセージと点滅するランプに従って操作します。
(3) 電極パッドを貼る
- 傷病者の衣服を取り除き、胸をはだけます。
- 電極パッドの袋を開封し、電極パッドをシールからはがし、粘着面を傷病者の胸の右上と胸の左下の肌にしっかりと貼り付けます。(貼り付ける位置は電極パッドにイラストで表示されています。)
- 電極パッドを貼り付ける際にも、可能であれば胸骨圧迫を継続してください。
- 機種によっては電極パッドのケーブルを接続するためにAED本体の差込口(点滅している)にケーブルのコネクタを差し込むものがあります。
6 心電図の解析
- 電極パッドを貼り付けると“体に触れないでください”などの音声メッセージが流れ、自動的に心電図の解析が始まります。このとき、「みなさん、離れて!!」と注意を促し、誰も傷病者に触れていないことを確認します。
- “ショックは不要です”などの音声メッセージが流れた場合は、ただちに胸骨圧迫を再開します。
(注1)心電図の解析中は、「心室細動」が起こっているか心臓の状態を調べている状況です。この時に胸
骨圧迫を続けていたり、傷病者に触っていたりすると、心臓の状態を正確に調べることができない
可能性があります。
(注2)「ショックは不要」=「心臓が動いている状態」ではありません。傷病者に反応がなく、普段どお
りの呼吸をしていない場合は胸骨圧迫を実施する必要があります。
7 電気ショック
- AEDが電気ショックを加える必要があると判断すると“ショックが必要です”などの音声メッセージが流れ、自動的に充電が始まります。充電には数秒かかります。
- 充電が完了すると、“ショックボタンを押してください”などの音声メッセージが出て、ショックボタンが点灯し、充電完了の連続音が出ます。
- 充電が完了したら、「ショックを行います。みなさん、離れて!!」と注意を促し、誰も傷病者に触れていないことを確認し、ショックボタンを押します。
- 自動でショックが実施される「オートショックAED」が発売されています。この場合、ショックが必要とAEDが判断した場合には、傷病者から離れるように音声ガイドが流れ、カウントダウン(例:スリー、ツー、ワン)やブザーの後にショックが自動で実施されますので使用の際にはご注意ください。オートショックAEDについては、ショックボタンが無く、ロゴマークが貼られています。
オートショックAEDに表示されているロゴマークです
8胸骨圧迫の再開
- 電気ショックが完了すると、“ただちに胸骨圧迫を開始してください”などの音声メッセージが流れますので、これに従って、ただちに胸骨圧迫を再開します。
9AEDの手順と胸骨圧迫の繰り返し
- 胸骨圧迫を再開して2分経ったら、再び、AEDから音声メッセージが流れます。以後は音声メッセージに従って、AEDの使用と心肺蘇生の手順を繰り返します。
(注)心肺蘇生を中止していいとき
・傷病者に普段どおりの呼吸や、目的のあるしぐさが認められたとき
・到着した救急隊に引き継いだとき
中止する場合でも、AEDの電極パッドははがさず、電源も入れたままにしておいてください。
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